NHK契約キャスター・リポーターとは

NHK契約キャスター・リポーターとは

NHKの正社員募集とはまったく異なります。

NHK各地域放送局発の昼や夕方のニュース番組などで見かける女性アナの募集です。

見た目にはNHKのアナウンサーですが、雇用形態も研修もまったく違います。ですから新卒の方は、できるだけ民放やNHK本社(最近は地域職員も)採用をまずは目指した方がいいと思います。

一般企業で勤めていたけど、どうしてもしゃべりの仕事につきたいとか、フリーでやっているけど仕事があまりなくて、という方の応募が昔は多かったようです。ただこのご時世、採用のない局も多いので、新卒試験の延長線上で受験される方も増えています。ただ、基本的には中途採用の一部と考えておいたほうがいいでしょう。

基本的に3年くらいまでの契約で、その後は、年齢によってはもう一度別の局のキャスターに挑戦したり、フリーになったり、または古瀬絵理 さんのようにタレントに転身する場合もあります。

ところで、ほとんどの局が「キャスター・リポーター募集」と書かれてますが、リポーターとキャスターはどう違うのでしょうか?

また契約形態を見ると

<キャスター>
1年ごとの出演者契約(更新する場合もあり)
※雇用契約ではありませんので社会保険三法の適用はありません。

<リポーター>
1年ごとのスタッフ契約(更新する場合もあり)
※社会保険三法の適用

と書いてある局も。

いわゆる局アナとの違いがわからない方も多いと思いますので、アナなるドットコムがNHKキャスター・リポーターの疑問についてお答えします。

NHK契約キャスター・リポーター経験者に聞く

今回お話を伺ったのは、四国で契約キャスターをした経験のあるSさんです

「仕事内容」

Ananaru「まずは仕事の内容を教えてください」

Sさん「メインの仕事は夕方のニュースキャスターです。男性の局アナと2人で担当していました。昼間は取材などをして夕方に照準を合わせてというような感じで 。他には四国ブロックの番組のコーナーで旅番組があり、週に一度はそのロケに出かけ たりもしていました。人によっては特番がある場合はその司会などもしたりします。あ とは中継やラジオニュースとかイベントの司会ですかね」

Ananaru「何人くらい局には契約キャスターはいて、担当する番組などは分かれているんですか」

Sさん「私のいた局には契約キャスター・リポーターが6人いまして、だいたい夕方のニュースか 昼前の情報番組に分かれて仕事をしています。それぞれ2人ずつくらいで1週間の番組を回しています。

局の規模によっては土曜日の番組担当やスポーツ担当というところもあるみたいですけど、ニュースは多少落ち着 いていて、しっかりとしていないとというのがやっぱりどうもあるらしく、読みもやっ ぱりそこそこ落ち着いている人。」

Ananaru「報道系は取材とか編集とかも民放の地方局のアナのようにやるんですか」

Sさん「ニュース番組担当の人は原稿も書いて、書いたニュースを自分で読むこともありますし、編集作業にも立ち会ったり、5~10分くらいのリポートもつくりますね。

カメラマンさんにこのロングを取って下さいとか指示したり。自分たちで構成やカメラ割りも考えて、編集も自分でやってというのはありました。もちろん取材対象者 に自分でアポも取ったりしますし、カメラを抱えて撮影にも行きました。その辺の仕事は意外なところでしたね。ここまでやるのかと。

情報番組担当者はお料理コーナーの編集を自分でやったりするし、みんな基本的に編集機の操作は必要になります。実際しゃべる仕事とそれ以外の仕事は半々くらい だと思います。(番組を)作る楽しみがある人がやっぱり評価されるような気がして・ ・・。それでいいもの(番組)を出せる人が。もちろん喋りがうまいのも評価されますけどね」

研修

Ananaru「入社前にアナウンスの研修などはあるんですか」

Sさん「はい、あります。所属局に行ってそこのアナウンス部長さんに教えてもらったり、春に入ってくる人のための研修に行かせてもらう事もあります。

研修は1週間や1泊2日のプランなどがあり、全国の人が集まって情報を交換しつつカメラのテストやメイク、しゃべり、原稿を書くなど一通り教えてくれる研修です。そして4月に はもう「新年度キャスターですっ」てことで即デビューしてますね。

この辺はじっくり と研修してから送り出す正社員アナとの違いです。それでもアナウンス学校に通ってい た人というのが多いので、まったく原稿を読めない人というのはさすがにいなくて、ある程度形にはなってますかね。まっそういう子を採用しているかもしれませんね」

Ananaru「入ってからも研修はあるんですか」

Sさん「先ほどお話しした新人の研修に混じって、2,3年目の人が参加することがあったり、時々東京のアナウンサーが出張してきた際にも局内で勉強会などがあります」

休みについて

Ananaru「お休みなどは?」

Sさん「基本は土・日・祝日は番組がないのでお休みなんですけど、ただその休みの日 にロケが入ったりということもあります。

私は年次が上がるにつれてだんだんと休みがなくなってきて、体を壊しそうになりました。 人によりけりですけどね。本人のがんばりと自分に適応する番組が多ければ(休日と)当っちゃいますね」

Ananaru「やっぱり売れっ子になる人もいるんですね」

Sさん「でも病気した時や体壊した時にどうしようかなという怖さはありますね。戻ってきたときに自分の居場所が本当にあるのかという。

社員の人は病欠して戻ってきても あるけど、私たちは契約は一年ごとに更新しますから、もし一年病気で休んだら、多分 次はないと思ってしまうんですよね。

だから多少無理してでも自分の場所を確保しようとしますし、体調面でもあまり病気ばっかりしていられないから風邪を押してでも出演したりしたこともあります。その辺が正社員アナとの違いではありますね。

実際、一年で契約を切られる人もいるそうです。多くはないですけど。だいたい能力的な ものだと思うんですが、聞いたことあるのは、取材とかもあまり積極的に行かないとか 、この分野ならがんばれるというのも特になかったみたいで。ただテレビに出たいとかいうだけで入ってきた人なのかなぁ。やっぱり一生懸命さがないとだめということなんじゃないでしょうか」

注:契約は1年ずつ更新の3年までだそうですが、4年5年やる人もいるそうです。ただ基本は3年で一区切りのようです

待遇面

Ananaru「局によって※1社会三法の有無とかありますけど待遇面はどんな感じなんですか」

Sさん「局によって違うそうです。私は社会三法がついていたんですけど、他の局の人は出演者契約になって三法が全然ない人もいたそうです。
だから出演者契約の場合は自分で確定申告が必要です。」

Ananaru「出演者契約だと給料も違うんですか」

Sさん「少し違ってくるみたいです。出演者契約の人は番組契約、つまりフリーアナと同じなので残業が付かない場合もあるようです。

ただやっている仕事はそう変わりないので、本当にかわいそうだなと思いました。保険料なども自分で支払わなくてはいけないですから。でも今は経費節減でそういうところ(出演者契約)も多いみたいです」

Ananaru「衣装とかも女性は大変でしょう」

Sさん「衣装代はなかったです。それも局によって(有無は)違いますけど。仕事用の服を買い込んで赤字になった人は多いですね。私は着まわしがきくものをあえて選んでいました。

変わったデザインのものは買いません。ベーシックな形のでベーシックな色のものでインナーをぐるぐる変えたりしてました。でも衣装代と化粧品代に関しては正社員アナとはそんなに差はありませんね」

Ananaru「家賃補助とかは?」

Sさん「家賃補助は正社員はありますが私たちはまったくありません。地域的には車が必要なところもありますけど、やっぱりお金もかかるんで、地元出身者ならまだしも、車はなかなか持てませんね」

※1 社会三法とは雇用保険、健康保険、社会保険のこと

<補足>
契約社員であれば雇用保険、社会保険の適用になります。一方、請負や委任関係にある場合は文字通り「社会三法」は適用になりません。つまり「個人事業」という形でキャスターの仕事を請け負い、その仕事の報酬としてお金をもらう、という形になるので「雇用関係」にはならないのです

オーディションと契約満了後

Ananaru「キャスターの採用試験(オーディション)はどんな感じなんですか」

Sさん「まず書類選考ですが、送る書類はだいたい3つか4つでしたね。これは今も変わりませんね」

・履歴書(写真貼付、市販の物で可)
・スナップ写真(全身)
・作文(400字程度)
・経験者は過去に出演したDVD

注:2022年頃から写真とともに動画を提出させる局も

「作文のテーマとしては、どこの局もだいたい同じで、これも毎年変わらないので、要項発表の前から色々と考えておくといいと思います。お題はほぼ3つのうちのどれかでしたね。まず一番よくあったのが、 ○○放送局でやってみたいこと、伝えたいこと。あとは、 最近気になること とか 今、関心のあるニュース というお題でした」

Ananaru「では、実際のオーディションは?」

Sさん「私の時は、難しい漢字の読みがありました。就職試験に出てきそうな漢字。多少間違えましたけど受かっちゃいましたね。あとニュース原稿、1本。

私の時にはシンプルでしたけど、年によっ ては、自分の今日の持ち物の中で思い出深いものをひとつ取り出してそれについて話してくださいというのもあったそうです。だから鞄にはいつも思い出深い語れるものをひとつ持っておくといいかもしれませんね(笑)。

試験は1日で終って、その日か次の日くらいには合否の電話がかかってきました。何度も行ったり来たりも出来ないので1回勝負ですね」

Ananaru「やっぱり地元の人が有利なんでしょうか」

Sさん「毎年のように地元出身者を採用するところもあるそうですが、全体的に見ると地元じゃない人の方が多かったですね。むしろまったく縁のない人のほうが多い。けど、人材ありきですね。

ただ同じくらいのレベルで採用をどちらにしようかなと迷った場合は、地元にゆかりのある人を選ぶこともあるかもしれませんけど。だから入ってから地名の読み方や方言、お祭りなどをおぼえなきゃいけないのは、きついですね」

Ananaru「受験者はどんな人が多いんですか」

Sさん「新卒が少し多いかもしれませんね。私の時も4割か半分くらいいました。あとは就職浪人の子とか、他の局で契約で3年やってきたような人も1割くらい。私のようなOL経験者も3割くらいいましたね。

でも新卒の子は、いきなり待遇面でも厳しいところに入ることになるので、そこを乗り越えるくらいのやる気があるかどうか。休みも十分ないかもしれないし、給料も低いし、お母さんたちにボーナスで何か買ってあげることも出来ないけれど、それでもいいっていうぐらいでないと」

Ananaru「契約が終わったあとの進路はどうなんでしょう」

Sさん「別のNHKの契約キャスターに渡り歩く人もいますね。あと民放のローカル局の契約アナになるケースもあります。フリーになってもなかなか今は仕事がないようですし。あっても企業用のVTRとかの仕事が時々来るくらいでテレビの仕事はなかなか難しいみたいですね。

ですから新卒の方は入れるならやっぱり正社員がいいですよね。どうしてもなりたいならこのパターン(契約キャスター)ですけど・・・。
この仕事をしたら次は多分正社員になるのはちょっと難しい、民放でなれても契約が多いでしょうし」

今回の取材を通じて、アナなるドットコムが思ったこと。
研修面では、民放の規模の小さなローカル局よりもずっと恵まれているかな~。でもその反面、色んな意味で「覚悟」も必要な仕事だなぁと思いました。新卒の人にも、ある程度の企業に勤めていた人にとっても。
編集後記