鳥越俊太郎「安倍政権の“恫喝”にメディアが委縮している」
この3月、『NEWS23』(TBS)の岸井成格氏、『報道ステーション』(テレビ朝日)の古舘伊知郎氏、『クローズアップ現代』(NHK)の国谷裕子氏が相次いで降板。鳥越俊太郎氏に話を聞いた。
◆高市大臣の「電波停止」発言は、メディアの“恫喝”
これだけのキャスターが揃って同じ時期に降板することは、単なる偶然とはいえないでしょう。
批判番組が増えて内閣支持率が下がることを気にしている安倍首相は、歴代の政権ではありえなかった対応をしています。これほどテレビ報道をチェック、監視している政権は初めてでしょう。そのためメデイアは政権に気を使い、萎縮してしまっているようにみえます。
「政権批判をすると放送法違反になる」ということを匂わせる高市早苗総務大臣の「電波停止」発言は、メディアを“恫喝”したものです。「政権を常に監視して、間違っていれば批判をする」ことと「(放送法が定める)異なった意見を取り上げる」ことは次元が違う話なのに、高市大臣は混同している。
権力監視はメディアが歴史的に担ってきた権利・義務です。ときの政権は、常にメディアの批判にさらされる立場にあります。国が道を誤ろうとするときに警告を発する役割を果たさなければ、メディアが存在する意味がありません。
今年4月以降、政権批判番組はほとんど放送されなくなるのではないでしょうか。古舘氏は最後にドイツを訪問、安倍首相をヒトラーになぞらえる番組を制作しました。
「改憲で自民党改憲草案の緊急事態条項ができると、日本がナチスのように独裁化する恐れがある」と警告したのですが、ああいう骨のある番組を作る局がこれから出てくるのか。権力者が道を誤ろうとしたときに、それを軌道修正する力がメディアにあるのか。非常に危うい状況です。