アナウンサー試験の面接
まずは親しみやすさ
アナウンサーはタレントではありませんが、テレビでも街頭でも人前に登場することの多い職業です。あるアンケート結果で、「望ましいアナウンサーの条件」のひとつに「気さくで、親しみがあり、感じの良い人」というのがありました。しかも70%以上の視聴者がそう思っていました。
美男美女が第一条件ではありません。事実、どこの放送局も、美男美女というひとつの条件でアナウンサーは採用していません。もちろん見た目は大切ですが、あなたからにじみ出る親しみやすさ、好感度がどれくらいあるか、面接官はそこを一番に見ています。面接では着飾らずに、それをそのまま出せるかどうかが重要です。
声や話し方ももちろん大事
どの会社の就職試験も面接の受け答え自体はもっとも大切ですが、アナウンサー試験の場合は特に「声」の大きさと話のまとまり、話すときの表情なども重要です。
「声」が大きいと、元気よく見えるのはもちろん自信があるようにも見えます。そして入室時の挨拶や自己紹介をしただけで面接官がこちらに注目してくれます。特に集団面接では注目を集めた者勝ちというところがありますから、それだけでかなり有利です。
アナウンサー試験を受けにきているのに「本当にこの人はアナウンサーを目指しているの」というくらいぼそぼそとしゃべる人も中にはいるのです。自己紹介だけで質問をされずに終わってしまった人も見かけたことがあります。
しかし一般企業を受ける場合なら、他の人が「声」を鍛えることをしていない分、声の大きさは武器にもなりますが、アナウンサー試験ではある程度ボイストレーニングをやってきた人も多いので、むしろやっていなかったらかなり不利といえるでしょう。
もともと声が通る人をのぞいては、声を鍛えておくのは必須条件です。アナウンサーらしい美声になる必要はありません。何もやっていなかった人でも、1ヶ月もやればすぐに効果が出ます。
質問に対する受け答えは、堂々と支離滅裂にならないように。とくに必ず聞かれそうな質問には前もって簡潔な答えを用意しておきましょう。時になんでこんなことを聞いてくるの?という質問もありますが、アナウンサーに必要な反射神経、当意即妙さを試されています。そこで面接官の気持ちをぐっとつかむような受け答えができれば最高です。あなたの人となりに加え、頭の回転のよさもアピールできます。
また、内容はもちろん、伝える技術の優劣も他の業種以上に問われます。カメラテストでもフリートークがありますが、普段の受け答えでもまとまった話ができなければ、アナウンサーになって大丈夫だろうかと不安を与えてしまいます。日常から起承転結を意識した会話を目指すよう心がけましょう。
言葉遣いと言葉の選び方
特に言葉遣いと言葉の選び方には注意が必要です。尊敬語と謙譲語の使い方の間違いも気をつけないといけませんが、まずは丁寧な言葉遣いを心がけること。近年、アルバイト先の社員などに対しても丁寧な言葉を使っていない若者が多いですが、普段やっていることは咄嗟の時に出てしまうものです。
例えば、「僕 →私(わたくし)」「 どこ・どっち→どちら」「さっき→先ほど」 「今→ ただいま」 「誰→ どなた」 「どうでしょうか→ 如何でしょうか」
ちなみに敬語には、聞き手・話題に対しての話し手の敬意を表現する「尊敬語(相手に対して使う言葉)」「謙譲語(自分に対して使う言葉)」と、聞き手に対して話し手の敬意を直接に表現する「丁寧語」とがあります。使い分けは非常に難しいですがしっかり身に着けましょう。
また仲間内だけで使う言葉や、若者の間では頻繁に使われているけれども年代によっては通じないかもしれない言葉は使わないか、言い換えるようにしましょう。プロのアナウンサーは常にこのことを頭において放送でしゃべっています。不特定多数に通じるような言葉を選択するよう心がけましょう。
面接官はここを見ている
テレビ朝日の元アナウンス部長 山崎正さんに「面接」についてお伺いしました。
山崎 正(やまざき・ただし) 1944年生まれ。73年テレビ朝日(当時日本教育テレビ)入社。アナウンサーとしてニュース、スポーツを担当。73年から2003年まで 「大相撲ダイジェスト」 を30年間担当。アナウンス部長 専任局次長などを経て2004年退社 |
面接のポイント
Ananaru 面接官は受験者のどんなところを見ているのでしょうか?
山崎 どこというより、総合的なものです。気負っていたり、マニュアルを読んで準備してきたようなものは、すぐに見抜かれますね。
自分の素顔、持っているものを出せるようにしてほしい。そのために、自分をいろんな角度から分析する。その上で、なぜアナウンサーになりたいかを考える。必死で考える。そこで出てきたものを自然に、素直に出せる人に好感を持ちますね。
Ananaru 面接で思いがけない質問をされることもありますが、面接官は何を意図していたのでしょう?
山崎 あなたの『地』の部分を試そうとしているだけですよ。本当の素顔、素直なリアクションはどんな風なのかなって。構えずに、素直に答えれば大文夫です。
Ananaru マニュアル化された答えはいけないということですが、質問と答えをあらかじめ想定してはいけないのですか?
山崎 慌てないように考えていくのはかまいません。その上で、色々出てくる『素顔』が伝われば一番。
でも、これからの放送界、テレビ局のことなんかは日頃から考えていた方がいいと思う。そのためにはやっぱり、新聞やニュースでの勉強が大切です。
あと、アナウンサーは人にものを伝えるわけだから、自分の名前から、ゆっくりしっかり伝えること。もちろん話す内容も。
カメラテスト・音声テストのポイント
Ananaru 原稿読みでは、どんなところをチェックしているのですか?
山崎 まずは、滑舌とアクセントをチェックします。アナウンス技術を勉強していない子でもこの子なら研修で何とかなりそうだなという感じならば問題ないですね。
全く声が出ないとか、滑舌が悪すぎる、サ行やラ行など致命的な欠陥がある場合は厳しいですけど、多少声が小さくても訓練すれば問題ないと判断すれば気になりません。
あと原稿の読み方についてですが、アナウンス学校に通った人とそうでない人で、当然差は出てきますが、やっていなくても「勘どころのいい人」は長年の経験でわかるもので、逆に通っていてもダメな人はダメです。
つまりは文章の読解力のあるなしですよね。その文章をどれだけ理解しているか伝えているかどうかです。
Ananaru フリートークやパネルトークも、カメラテストで行われますが、それについてはどんなところを見ていますか?
山崎 「明るさ」「落ち着き」「機転がきくかどうか」などを見ています。
明るい人は話す時も面接の時も、得をしますし、明るい人の方が、一緒に仕事をしていきやすいですよね。