面接会場の外で

TBSアナウンススクール

アナウンサー受験で、〇次面接→カメラテスト→ と段階が上がっていくと、その放送局の若手アナウンサーが案内役や控室の世話係についてくれることがあります。受験した生徒から「〇〇アナウンサーに会いました! 親切にしてくれました。感動した~♡」という話を聞くことも。

歳の近い「先輩」と会話することで、人柄もうかがえるし、もしかするとその局のアナウンサーグループの雰囲気も感じ取ることが出来るかも知れない。貴重な体験ですよね。

控室といえば、こんな話を耳にしたことがあります。

差し出されたハンカチ

ある局の、かなり人数が絞り込まれた段階の面接試験。

控室で自分の順番を待っていた女子学生がいました。仮にAさんとしましょう。

そこに、本番会場で面接を終えたばかりの別の女子学生が戻って来ました。

その学生はどうやら「失敗してしまった」という手応えだったらしく、Aさんの横の机に座ると、嗚咽を漏らし始めました。

二人は初対面で、Aさんは少し驚いたようですが、すぐに自分のハンカチを取り出して彼女に差し出しました。

「その渡しかた、気遣いかたがとても自然で嫌みがなく、『あ、いい人だな』と素直に思える感じだったんですよね」とは、その光景を見ていた控室担当の人事部員の言葉。

Aさんが内定を勝ち取ったのは、もちろんこのことが決め手になったわけではなく、試験でのパフォーマンスが優秀だったからでしょうが、人事部員にプラスの印象を持たれたことは確かです。

色々な人が見ています。

採用試験では、あなたを見ているのは面接員だけではありません。

上のエピソードとは逆に、控室での何かのしぐさや係の人への態度が悪い印象を与えてしまい、「しゃべりは上手くても、あれじゃあね…」と判定されてしまう可能性もあるのです。

アナウンサーを採用する側は、その学生が、視聴者、聴取者だけでなく、共演者や番組制作者にいかに好印象を持たれる人柄であるか、ということも重視します。

そのために、「素」が出やすい部分を、結構気を付けて見ているのです。

スクールでは、生徒に、

「試験は面接会場だけではない」

「建物に一歩足を踏み入れた瞬間から試験は始まっている」

と話します。

「その局の最寄り駅の改札を出たら、気持ちや顔の表情に受験モードのスイッチを入れなさい」

と言ったりもします。局に向かう道でどんな社員が見ているかわかりません。

面接ブースに入る前後も重要

面接会場でも、面接員の座るブースへ歩いて行く間、そして終わった後に会場を出ていくまで、しっかり見られています。

ブースまでの数秒間。緊張のあまり強張った表情になりがちですが、そこはしっかり前を見て、堂々とにこやかに行きましょう。俯いて歩くなどもってのほかです。

アナウンサーという仕事はある意味サービス業でもありますから、負の感情に負けず、つねに明るい印象を周囲に与えられるかどうかも大事です。

面接が終わってからも、出来はどうあれ、笑顔で会場をあとにしましょう。反省は、局を出てからいくらでも出来ますから。

さて、冒頭の話。

現役の若手アナウンサーが何故受験生の世話役につくのか。

「自分の後輩になるかも知れない学生さん達は、どんな人たちなのかな?」

彼ら彼女達も、立派な「面接員」なのかもしれませんよ。

文・TBSアナウンススクール
http://www.tbsan.jp