アナウンサーを目指すなら「耳を鍛える」

耳を鍛える

アナウンサーの基本技術習得にはいろいろな要素があります。

発声、滑舌、文章の読み方、伝え方…

共通して、非常に大切なのはを鍛える、ということ。

え? 口や舌、息などをいかにコントロールするか、じゃないの?

もちろん、その通りなのですが、では、今自分が正しく音を出せたかどうかはどうやってわかりますか? そう。自分の耳で聞いて判断するんですよね。

「正しい耳」をつくる

アナウンスのスクールでは、皆さんの発音について、講師が「その音はあいまいだ」「もっとこういう音を」などと指摘します。講師が正しい音を聞かせながら。

じゃあこうかな?と出してみた音を「そう、それです!」と講師が褒めてくれたとしましょう。「できた!」と喜ぶだけでは、実は「できた」ことにはなりません。

最初に出した音と今出した音の違いを、その後もあなた自身がしっかりと聞き分けられなければ、同じ間違いを繰り返すことになります。

実際、「先週は出来たのに、今週また元に戻っちゃったな」という生徒さんが結構います。

教室から離れても、機会がある時に自分が出した音を自分でチェックする。「あ、今のは違うな」と思ったら、正しく出す努力をする。この繰り返しが上達の大きなポイント。

そのためには、判断できるを持っていなければいけません。

講師は、正しい音の基準を教え、覚えてもらうという作業をします。つまり、

生徒が正しい耳を身に着ける手助けをしている、もしくは、一緒に正しい耳をつくりあげている、という言い方もできるでしょう。

他の人を「聞く」ことも大事

スクールで学ぶ大きな利点の一つに、他の生徒のしゃべり、発音を聞くことができる、ということがあります。

自分以外の人達は、講師に何を注意されるのか。そしてレッスンの中でそれを修正できているか。

よく聞いていれば、自然に自分の耳が育ってきます。

ある人の発音を聞いて「ここがイマイチだな」とあなたが感じた場所と同じポイントを講師が指摘したら、あなたの耳はかなりレベルアップしていますよ。

ですから、スクールでは、自分の順番以外の時間も、とても勉強になるんですね。

なにより、頑張っている仲間は、さまざまな刺激や励ましを与えてくれます。

ものまねの力

声のものまねの上手い人は、例外なくの良い人です。

新人アナウンサーの研修講師を務めた経験から言えることですが、

当初発音の欠点や読みグセがかなりある人でも、ものまねが上手ければ、それを比較的順調に直せるケースが多い。

ものまねとは、外部の音を自分の声で再現するということですから、

  • 微妙な音の違いを聞き分けることができ、
  • 口の中をどう動かせばそれと同じ音が出せるか、の引き出しを多く持ち、
  • 出した音が「合って」いるかの判定が自分で出来る。

したがって、講師や先輩から指摘されたとおりに、自分の発音や読み方を修正しやすいのだと思います。

誤解しないで欲しいのですが、ものまねが上手くないとアナウンサーには向かないかというと、そんなことは全くありません!

TBSでも、ものまねをしないアナウンサーの方が圧倒的多数です。

ただ、皆、良い耳は持っています(鍛えられますし)。耳は良いが、ものまねは別にやらないよ、という人が多いということでしょうか。

テレビを「聞いて」ください

ぜひ、様々な番組のアナウンサーの読み、しゃべりを集中して聞いてください。

自分の中の基準で良いので、何らかの評価をしながら。

それが、あなたの耳を鍛えることにつながります。

できれば、ラジオも聴きましょう。音声だけで勝負している人のパフォーマンスは、本当に良い教材です。

そして、自分の声、発音も。

普段意識を持って自分の声やしゃべりを聞いているかどうか。

まずは、自分の良い「聞き手」になってあげましょう。

 

文・TBS Voice
http://www.tbs.co.jp/anatsu/school/