2015/7/24 埼玉西武ライオンズ中村剛也 300本塁打・1000安打・満塁本塁打

2015年7月24日 埼玉西武×北海道日本ハム

中村剛也 プロ通算300本塁打1000本安打同時達成、歴代1位タイ通算15度目の満塁本塁打

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まさかこんなことが本当に起きるとは!

いや起こしてしまうとは!

本当に中村選手はすごいです。

中村選手がこの記録を、
今パ・リーグNO1の大谷翔平投手から本塁打で同時達成したらすごいだろうな、と
淡い期待を当然実況前は抱いていたわけですが、
「まずそれはないだろう」と正直思っていました。
だって今季パ・リーグNo.1防御率 大谷投手ですよ。

なのでまず本塁打以外で1000本を打ってしまった時、なんて実況したらいいかと、
試合前からそっちの方をむしろ考えていました。

実際、第1打席でそうなるかも!というシーンがありました。
日本ハム岡選手の好捕でヒットにならなかったのですが、
あの打球がとられていたからこそ同時達成があったのです。

記録達成の瞬間は、僕自身は驚きというより、「おいおい本当にやっちゃったよ」という気持ちの方が大きかったですね。

「やっぱりファンの期待通り」と実況したのは、
やったらすごいだろうな~とみんなが思っていることを実現させるチカラがあることを痛烈に感じたから。

ご存じのようにこれだけでは終わりませんでした。

実はこのあとの本塁打の方が、
かねてから実況したいと待ち望んでいたものだったのです。

かなり興奮しているように聞こえますが、
同点に追いついたことに興奮しているのではなく、
記録を作った直後に2打席連続で打ったことでもなく、
大谷投手から満塁本塁打を打ったことでもなく、

周囲の期待にまたしてもあっさり応えてしまう中村のすごさ、
そして自分の実況がはまったことに興奮していたのです。

過去20年の実況人生の中で、高校野球含め、
ここは本当に見せたいというシーンは、全くしゃべらないこともあります。
「ここはじっくり見ましょう」といって、マイクのスイッチも切って、解説さんにもしゃべらないような無言のメッセージをおくります。
(それでもしゃべっちゃう人もいましたが・・・)

といっても頻繁に使う手法でもなく、これまで1000試合以上実況して今回で3回目か4回目くらいでしょう。(解説がしゃべっちゃた場合を除く)

この決断は勇気のいるもので、下手すると5,6球 投手が投げているのに黙り続けていることもありました。

実際に過去、高校野球の中継でこれをやった際、あまりにファウルで粘るもんだがら、我慢しきれなくなってしゃべったら先輩アナに放送後「もったいない」と怒られたこともありました。

さてこの本塁打の直前を振り返ると、
満塁になった時点で、僕の脳裏にまずよぎったのは「記録を作るかも」ということでした。

これまで中村紀洋選手が王さんの満塁本塁打記録にリーチをかけたシーンに何度も出くわし、そのたびごとに期待をしつつも達成はなりませんでした。
そしていつしかその記録達成の瞬間を絶対に実況したいという思いに変わっていました。

今年5/30阪神戦で中村剛也選手の満塁本塁打の実況をした時から、僕の中では近づいているなと意識し始め、7/1ソフトバンク戦で14本目の満塁弾を放ってからは、いつその瞬間が訪れてもいいようにそのためのメモなどを実況ノートに書き留めておきました。

そして1か月もたたずにそのチャンスが巡ってきて、まずは記録を達成するかもしれないというアナウンスをしておかないとと打席に入る前に前ふりだけしておきました。(you tubeの動画にはありません。動画の直前です)

そしてそこから考えました。

ここはもう黙ってただ映像を見せる形もありかなと。
ただまだイニングは5回だし、打っても同点で試合が決まるわわけでもない、そこまでするかという自分と、
1000H&300HR を打った後の打席で、しかも大谷投手というシチュエーションを考えたら黙って見せてもいいのかなという自分と、せめぎあいがありました。

最終的な判断としては、「しゃべる」選択をしました。

しかし1球目の対決を見て気持ちは完全に変わりました。

あの大谷投手の真ん中直球をフルスイングで中村選手が空振りしたのを見て、
「これは黙って見せよう!」と

幸い解説の片平さんも、その1球を見た時の反応が僕と同じで、しかも「野球の原点」という言葉までいただけたことで、僕も「ここはじっくり見ましょう」と促し、マイクのスイッチを完全オフにしました。

そしてその直後の満塁本塁打でした。


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